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武蔵大学社会学部メディア社会学科2年次:メディア社会学方法論・松谷ゼミによる年刊ウェブマガジン

車を必要としない若者たち──大学生が若者の車離れについて考える

written by 野村 紗英[edited by 清水 千勢]

「車に乗らないから免許はいらない!」と話す若者が増えている、というニュースを目にした。私もその考えを持つ一人だ。

 近年、「若者の○○離れ」が問題になる傾向がある。その中でも車離れが多く取り挙げられるが、本当に若者の車離れは起こっているのか、大学生の筆者が考える。

若者の車離れの定義

 若者の○○離れと多く取沙汰されているが、「若者」とされる対象の年齢は厳密に定められてはいない。ここでは若者の年代は、車の免許を取れる18歳から30歳までとする。

 警察庁交通局運転免許課は、運転免許保有人口の調査をした。そのところ20代から70代のうち、20代が2番目に少なかった。 この結果は若者の車離れを決定づけるものになったであろう。

 若者の車離れと言われ始めたのは一説によると2000年代である。

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 このグラフは「自動車に興味や関心がある」と答えた性別・年代別の比率を表したものである。2001年から2009年にかけて男女ともにガクンと下がったのは、1991年に起こったバブル崩壊の影響だと考えられる。バブルの頃は若者に限らず、良い車を持っていることがステータスであった。女性は車で送り迎えをしてくれる男性のことを「アッシー君」と呼んで重宝するほど、車を保有していること付き合う男子を選ぶ際に大切な条件であった。しかしバブルの崩壊により、車の有無より安定を求める声が男女問わず、10年間でだんだんと強まった。そのため、バブルの崩壊である1991年から10年経った2001年以降に特に大きく影響が出たと考えられる。

 バブル期はスーパーカー輸入車のブームでもあった。景気が良かったので、たくさんの人が高い車を保有していた。実際に私の家庭でも、『ハマー』というアメリカ産の車を保有していたという。

現代の若者の考え

 バブル期と比べると、今の若者の考えはどう変化したのか。生の声を聴いてみることにした。今回インタビューをしたのは、免許を保有していない大学2年生の男子である。彼は「車を使わないから一生免許をとらない!」と断言する。理由を聞くと、「都内に住んでいる限り、大体の場所は電車で行けるし、都心には駐車する場所が少なく地方より都内のほうが駐車にお金もかかってしまう」と話す。私も彼と同じ考えで車の維持費を考えると電車の運賃が安く感じる。

 もう一人、大学2年生の女子にインタビューをしてみた。彼女は免許を取るために、教習所に通い始めたばかりだ。どうして免許を取得しようと思ったか聞いたところ、「就職に有利だと思う、将来どこに住むことになっても、車が運転できれば楽だから」と答えてくれた。就職活動で役立てようという考えは現代の若者ならではだと思う。

 13歳のハローワークが発表した「なりたい職業ランキング」 では、2位に金融業界、6位に公務員など、小学校を卒業してすぐの中学生が考えたとは思えないような現実的な回答が目立った。安定を求めるようになった若者の平均年齢が年々下がってきているといえる。こういった背景のもと安定を求め、スーパーカー輸入車に手を出すものは減少したと思われる。

 車の保有率が減った現代には、いろいろなサービスが存在する。日本での主なサービスはカーシェアリングである。カーシェアリングとは、登録を行った会員間で特定の自動車を共同使用するサービスである。レンタカーに近い存在であるが、ごく短時間の利用を想定しており、利用者にとってはレンタカーよりも便利で安価になるように設定されている。

 このグラフはカーシェアリング会員数を示したものである。2010年から2017年にかけて会員数が大幅に急増している。車の保有率の低下に反比例して、車を保有せずにカーシェアリングという形で車を利用する人が増加したと読み取れる。上記の分析で把握できた若者の自動車への興味や関心の低下により、自動車は購入するのではなく、必要な時に必要な分だけ利用できるサービスの供給が今後も続くと予測できる。カーシェアリングより既に馴染みのあるレンタカーの利用も増加しているが、比較できないほど普及の勢いは留まるところを知らない。

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 さらには、アメリカで「Uber」というオンライン配車サービスが生まれた。一般のドライバーが空き時間と自家用車を使って行なうタクシーのようなサービスである。アプリでヒッチハイクをするようなものだ。簡単に車を手配でき、決算までアプリで行なうため、料金がぼったくられる心配もないため安心さと手軽さが受け、カーシェアリングの普及とともにサービス地域が拡大している。現在、すでに世界70か国・450都市以上で展開されている。このアプリがある国ではタクシーの需要は減少する一方だろう。車の利用の多様化はここまで進歩してきたのだ。

若者の車離れが存在しない未来

 今後、車の利用の方法はさらに多様化し、技術が進歩して車を運転するのがロボットになるかもしれない。そんな未来には、「若者の車離れ」という言葉はもう存在しないだろう。そして若者は車から離れているのではなく、“車の保有”から遠ざかっているのである。

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