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武蔵大学社会学部メディア社会学科2年次:メディア社会学方法論・松谷ゼミによる年刊ウェブマガジン

地方大学離れと東京の過密化──地方大学振興法がもたらすもの

written by 萩原 優介[edited by 吉田 和希]

 若者の東京一極集中──そんな言葉がある。流行の最先端の地であり、様々な人種や考え方が集まる東京において、これほどピッタリな言葉はないだろう。そしてこれは大学受験でも同じようなことが言えるのだ。

 近年の18歳人口の減少によって、地方を中心として4割の私立大学が定員割れとなっている。また、文部科学省の調査によると国公立大学の受験者数は年々減少をしている。その一方で、東京圏の大学に学生が集中しており、東京一極集中の原因の一つであるといわれている。

 では、一体なぜ東京の私立大学に受験生があつまるのだろうか。

志願者数の減少

 昨今の日本の社会には多くの問題が存在している。その一つが人口減少である。ほとんどの都道府県で減少しているが、それとは対照的に増加している地域がある。それが、東京をはじめとする都市部である。地方から都市部へ人口が流入しているのだ。

 文部科学省の学校基本調査によると1992年に約205万人いた18歳人口は2018年には約118万人に減少、さらに大学志願者数は1992年の約92万人から2018年には約68万人に減少している(図1)。少子化に伴って、年々大学志願者数も減少してきているのである。

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減る国公立・増える私立

 長いスパンで見ると減少している大学志願者数だが、私立大学の受験者数は年々増加を続けている。旺文社の調査によると2017年に比べ約7%増加している。反対に国公立大学の志願者数は毎年5千人ほど減少をしている。

 高校3年生の後輩9人に、国公立大学か私立大学のどちらを志望しているかを聞いた。結果は9人とも国公立大学。その理由も全員が同じだった。それは、国公立大学の方が学費が安いからだ。総務省統計局によると2014年の国立大学の授業料は53万5800円、公立大学の授業料は平均53万7857円、私立大学の授業料は平均86万4384円であった。昭和50年の国立大学の授業料は3万6000円、私立大学の授業料は平均18万2677円であった(図2)。昔ほどの差はないのである。

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 では、実際のところはどうなのであろうか。

 これは一つの例ではあるが、群馬県で一人暮らしをしている友達がいる。彼も学費が安いという理由で国公立大学を志望した一人である。家賃が月3万円のところに住んでいるので年間で36万円、そこに授業料約53万円を加えて89万円。

 しかしここには光熱費をはじめとする諸経費は含まれていない。授業料と下宿費を合わせると私立大学の授業料を超える。下宿という条件下では、金額に大きな差が生まれることはなくなった。

 地方では、まだ家賃を含む諸経費は抑えられる。だが都市部ではそうはいかない。あらゆる物価が地方より高く、経費は膨らむ。にもかかわらず、地方から上京する学生は後を絶たない。

 もうひとりの学生は、「都会の生活もある程度経験して最終的にどちらに住むかを決めたい」と話す。彼のように地方から東京の私立大学にへ進学する学生は全国にいる。

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都市への集中を止められるのか

 このようなケースは以前から存在しているが、近年この動きに拍車がかかっている。

 首都圏及び近畿圏での大学等の新設を規制していた工場等制限法が2002年に廃止された。この法律の廃止によって、東京の大学にさらに注目が集まるようになった。

 この状況を取り戻すべく設立されたのが、地方大学振興法だ。この法律では、文部科学省は東京23区の私立大学の定員増加を一部の例外を除いて認めないとしている。大学進学に伴う若者の東京一極集中を是正し、地方大学の振興に結び付ける狙いがある。この法律は2018年6月1日に公布され、10年間定員増を認めないとしている。また政府は交付金制度も設け、地域の専門人材育成や中核産業振興を対象として100億円の予算を計上している。

 しかし、これには反対の声が多いのも事実である。2月、東京都は小池百合子知事名で反対の声明を出し、日本私立大学連盟も同様の態度を表した。だが、結果的に法律は公布された。

 さらにこの法律には大きな落とし穴がある。それは規制が23区内に留まっていることだ。有名校の多くは郊外にもキャンパスを持っている。このような状況下で一体どれほどの効果があるのだろうか。

 このように様々な要因が重なり、地方国公立大学の受験者数が減少し、東京の私立大学の受験者数が増加している。そこには人口の流動という要素が深く関係している。

 しかし、立地条件がよくブランド力のある大学を受験生が選択するのは必然的なことである。多くの大学が国際化をはじめとして変化する中、やはり魅力があるのは地方よりも情報が豊富にあり、様々考えが集まる東京の大学である。そのため、毎年多くの受験生が地方から東京の私立大学を受験し、東京にやって来る。この状況で今から法律を成立させても、もはや手遅れではないだろうか。