m-sms 2018

武蔵大学社会学部メディア社会学科2年次:メディア社会学方法論・松谷ゼミによる年刊ウェブマガジン

ホストに貢ぐ女性たち──彼女達の気持ちはどこからくるのか

written by 村上 由妃乃[edited by 吉田 和希]

  “ホス狂”という言葉をご存知だろうか。文字通り「ホストに狂う」という意味であり、通う頻度が多かったり、依存気味になったりしているさまを指す言葉である。学校や昼の仕事を辞めて、風俗やキャバクラで働き始める女の子も珍しくない。なぜ彼女達は、自分の生活を投げ打ってまでホストにハマり、大金を貢ぐことができるのか。今回は、実際にハマっている女の子と、クラブの経営者への取材を絡めながら、明らかにしたいと思う。

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システムが女性を虜にする

 取材したふたりのホス狂の女性には、共通するハマるきっかけがあった。それは「初回だと安い」と誘われたことだった。ホストクラブと聞くと高くつくイメージがあるが、驚くことに初回だと無料から3000円で夢の世界へ行くことが出来る。
 ホストと聞くと、ギラギラしていて、怖いイメージが強いが、実際のホストは優しくて、丁寧で真逆なイメージだったという。お姫様みたいな感覚を2000円前後で味わえるのなら、居酒屋にいくより安い!と思い、初回ばかり行っていたようだ。そして、自分のタイプのホストと出会い、担当になり、はまってしまったという訳だ。担当とは、お店で指名するホストのことであり、接客をしてくれる。基本的に1店舗1人までである。

お金で味わう非日常

 彼女に、なぜホストが良いのか尋ねると、もともと依存体質で、前はジャニーズジュニアの追っかけで、コンサートのチケット代に15万円使っていたという。しかし、芸能人はどんなにお金を使っても、隣に座って話したり、デートしたりしてくれない。
 一方で、ホストはお金を使えば使うほど大事にしてくれる。お店だけだった関係から、アフターをしてくれるようになる。アフターとは、営業が終わった後に、一緒に食事やカラオケにいってくれることだ。ここではまる女の子もいるのだろう。
「自分の中の満たされない何かを埋めてくれるのがホストだった。ブランド品は喋らないし、寂しさを埋めてくれないでしょ? だけどホストはお金を使えば優しくしてくれる」と彼女は満足げに話す。
 ラストソングの存在も大きいだろう。営業終了時間直前に、その日の売り上げが一番高かったホストが好きな曲を歌うことであり、お店に残れることからアフター率が上がるという。これは店内にいるホスト、お客の全員が、この日一番売り上げたホスト、今日来たお客の中で最もお金を使った人間を一度に知ることができる仕組みである。つまりお客としては、ラストソングを歌わせることで指名のホストをたてることが出来て、かつ、自分の金持ちアピールを出来る場になる。
「注目されるのが気持ちよかった。これだけのお金を使えるのも、自分にそれだけの価値があるから」という思いだったという。

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ホストにかかわるお金の事情

 はじめは居酒屋でアルバイトをしていたがホストに通えなくなることから、キャバクラで週に6回働くようになった。ホストからキャバクラを強制されたわけではなく、お金を使えば使うほど引き返せなくなりいつの間にかお金使うのが義務になっていたという。
 お金の使いみちは、はじめは5万円のシャンパンをいれたらホストの奢りでカラオケデートしてくれて、自分だけ特別なのではないか、と錯覚していたと話す。そのときは指名ホストを独り占めした気分で、もう一度デートをしたいと思ったら、次は20万円のシャンパンをいれてくれたらと言われ、どんどん条件が上がっていった。バースデー(指名ホストの誕生日)に50万円のシャンパンをいれたときには「1人の男にこれだけのお金と時間と労力をかけられる自分ってすごいな」という気持ちだったという。

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ホストにはまるわけ

1・ホストクラブの営業方法
お金を使うほどサービスがよくなり、引き返せなくなる。特にきっかけでもある初回が気軽に楽しめるのが大きく影響していそうだ。
2・客である女性たちが寂しがりやである
人間関係や日々の不安からホストクラブに癒しを求めに行くのではないだろうか。
3・お金で非日常を味わえるから
日常生活ではあり得ないお姫様扱い等が、お金さえあればホストクラブでは体験ができる。まさに夢のような空間なのだろう。
 ホストクラブを経営する手塚マキさんは「ホストにということではなく、自分の意思を強く思っている人が、何かにはまりやすいのではないかと思う」と話す。
 今回私が取材を通して感じたのは、「承認欲求」の強さである。ホストにお金を使い、存在意義を見出すことで自分の居場所を作っているように感じられた。また、担当ホストを支えなければならないという責任感に、依存性があるように思える。支えるという意思の強い女の子がハマっているのだろう。お姫様扱いを受け、しばし現実からはなれ夢を見るのも、自分の身を滅ぼさない程度に楽しむのが大切だと思う。